目指せ ! 忘年会ライブ !! Act.6
〜 本番 〜
ついにこの時が来ました。
全ての準備を終えて控え室 (舞台の袖) などで本番までのカウントダウンの秒針の刻む振動を心で感じながら
「ああ、あの曲のフレーズがー、あのコーラスがー!」
といったありがちな不安を払拭したいが為ベースを抱え歌詞カードとにらめっこしているのはメンバーの中で私だけです。
晴れの舞台ではありますが忘年会という場を借りた宴会芸のひとつに過ぎないのだと自らのハードルを下げる事によって安心感を得ようとするおやじ理論を脳内で展開中なのであります。
後悔は先に立つ
扉の向こうでは乾杯がコールされ宴が始まりいよいよ開演まであと四十分ほど。
上司の挨拶などが終了し緞帳が下りたら再度アンプ、スピーカー、ドラムなど元に位置に速やかに戻し (客席側を半分使用していたので) ケーブル類を整えマイクスタンド調整し各担当楽器の装備を確認後スタンバイオーケーのサインをスタッフに出します。
すこし間をおいて緞帳が開きました。
本番です!ライブスタートです!
観客である職場の皆さんの声援と照明の関係か一人一人の顔がくっきりと見えて若干の緊張と興奮が交じり合う状態の中でボーカルのMCから一曲目、二曲目、メンバー紹介など進行していきました。
が、今回の曲目は前回よりも私のコーラスの割合が多くメインボーカルと大差ない (デュオの楽曲) 比率で歌わなければならない曲が二つほどあり、更にキーがとても高いといういわばハイトーン絶叫おやじボイスと切れ味の緩いこんにゃくベースのコラボサウンドのおぞましさを観客の立ち位置で確認したい気持ちもありましたがビデオカメラは吹っ飛ばされてあさっての方向を向いた状態での録画されていましたし聞いて聴けない事もないですが、まあ本当言えば大して見たくもないですけど。
前回問題になったのはボーカル後輩の酒酔いです。緊張を紛らわすためか同僚に飲まされたのかふらふら舞台上に現れへたりこみ
「飲み過ぎました曲の歌詞忘れました」
「!?」
と言いながらも途切れること無く何とか歌いきりましたが曲の合間に大の字に寝転んだり舞台の下から足を引っ張られたり宴会に相応しいパフォーマンスを披露した前科があり今回はそれを踏まえてか酔っぱらうこと無く淡々とした感じでしたが
「酔ってませんけど歌詞は覚えてません」
と歌詞カードを見つつ歌っていたのでロックボーカルとしては及第点といったところでしょうが。
私を含めたお調子者たちとは違いエレキギターX、Zのお二人は寡黙に仕事を遂行する番人の様にステージの両脇を固めてくれるギタリストとしては珍しい?生真面目な方々でしていつもアタマが上がりません。
最後の曲まで無事に終わり、アンコールの声が響く中 (次の出し物が控えているので再演は無し) それを断ち切る様に緞帳は降り現実世界へのリターンを促すのです。
長いようで短かったおやじバンド人生劇場約三十分、幕が閉じライブ終了です。
お疲れ様も程々に余韻に浸る間も無く超特急で撤収作業です!